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市場閉場1年の築地、訪日客に活路 料理教室や英語接客

市場が閉場して6日に1年を迎える築地(東京・中央)の街並みが変わり始めた。市場が豊洲(同・江東)に移転して食材の買い出し人は減ったが、場外市場の店には外国人観光客が多く訪れてにぎわう。訪日客向けの和食の料理教室が人気を集め、英語での接客や深夜まで営業する飲食店が広がるなど"新しい築地"が顔をのぞかせている。

「マグロ、ワサビ、ご飯の順番に乗せて丸めてください」。9月、和食の料理教室「TSUKIJI COOKING」には訪日客20人が集まった。講師の矢島由希子さん(51)の英語での説明を聞き、2時間かけてすしや魚の照り焼きなど調理を体験した。料理教室は2013年から始まり、月約350人の利用客のほとんどが訪日客だ。

米国からやってきたブルック・シヒさん(24)はすしを作るのは初めてといい、「素晴らしい体験だった。これなら家でできそう」と満足げだ。

国内では市場が移転した当初、「場外市場の店も閉鎖すると勘違いしていた客もいた」(店舗関係者)。一方、海外では築地は観光地として知名度が増しており、場外市場が大きく紹介されたガイドブックを手に歩き回る訪日客が後を絶たない。

老舗刃物店の「東源正久」はスタッフ全員が英語で接客している。包丁の専門的な話を英語で説明するのは難しいが、「説明できないでは済ませられない。従業員同士で勉強している」と代表取締役の小川由香さんは語る。今では来店客の過半が外国人だ。

伊藤海苔店の四代目、伊藤信吾さん(35)は市場移転後の18年11月に「MATCHA STAND MARUNI」を開店した。来店客の目の前で抹茶をたて、エスプレッソのように牛乳・豆乳に注ぎ入れる様子はインスタグラムなどのSNSに多く投稿されて、訪日客や女性を中心に人気が広がった。伊藤さんは「築地ならではの風情を、場外市場で力を合わせて守っていきたい」と決意を新たにする。

夜の街も明るくなった。早朝から働く人が多い市場が移転する前は、街も昼食時を過ぎればシャッターを下ろす店舗が多かったが、最近は遅くまで営業する飲食店が目立つようになった。

午後6時から営業する居酒屋「バッカナーレ」は市場が閉場する3カ月前に開店。「新しい築地の形をつくりたかった」と店舗担当者は説明する。来店した40代の女性は「にぎやかな銀座とは違い、静かな夜の築地で飲むのも悪くない」と話す。

ただ、市場の移転が経営に響く店舗は多い。サケの切り身などを販売する「マルタ食品」の男性従業員は「大口で食材を購入する買い出し人に比べると、観光客の消費は小さい」と肩を落とす。観光客向けにイカの薫製などのつまみを置くが、販売は伸びない。

ノリや昆布など海産物を扱う店舗の男性従業員も「買い出し人が築地にこなくなって販売量は3~4割減った」という。水産物を販売していた近くの店舗は観光客を呼び込もうとパン店に業態を変えたという。

市場移転後も活気を維持しようと中央区が設置した「築地魚河岸」。仲卸を経営母体とした小売店約60軒が入居する。キンメダイやノドグロなどの鮮魚を店頭に並べる店がある一方で、早くも撤退してシャッターを下ろしたままの店もある。

小売り大手が産地から直接水産物仕入れるなどして仲卸の経営環境が厳しくなるなか、市場の移転は追い打ちをかけた。入居店舗の男性従業員は「築地が観光地になるのはいいが、魚河岸の雰囲気も消えないでほしい」とこぼした。