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ふるさと納税、"赤字"団体続出 返礼品競争の拡大で制度にゆがみ

ふるさと納税の2018年度実績が総務省から発表された。受け入れた寄付額とかかった経費、翌年度の住民税控除額を自治体ごとに集計したところ、604団体(34%)が実質的に赤字だった。地方交付税の交付団体であれば控除額の75%は補填されるが、それを加味しても全体の21%にあたる373団体は持ち出しの方が大きい。返礼品競争のエスカレートで制度のゆがみも拡大している。

返礼品を含め、募集に要した経費は高止まりしている。返礼品の調達費が受け入れ額に占める割合は35.4%で、前年度から3.1ポイント改善したものの、総務省が通知で要請していた「30%」は大きく上回ったまま。送付の費用やサイト利用料など事務にかかる費用を含めた合計では、55.0%と前年度(55.5%)とほとんど変わらない。

6月から始まった「指定制度」で不指定となった大阪府泉佐野市などの4市町が押し上げただけではない。全体の25%に当たる454団体は、返礼品の調達費比率が30%以上だった。全体の経費率も35%に当たる620団体が50%を超えていた。両方の比率がオーバーしているのは329団体、どちらか片方がオーバーしているのは398団体で、合わせて727団体(39%)が総務省の要請を守っていなかった。

7団体は経費が受け入れ額超え

経費が寄付の受け入れ額を超えていたところも7団体あった。最も高かったのは東京都利島村で、受け入れ額の9.2倍の経費がかかっていた。寄付額が71万円と少なかった半面、その他経費として560万円かかっていた。同村によると「村内の第三セクターに業務を委託して委託料を払ったが、寄付が集まらなかった」(総務課)という。19年度は委託をやめ、村が直接寄付を集める方式に改めた。

経費率が受け入れ額の3.9倍だった山形県大蔵村は、17年度の寄付に対する返礼品の出荷が、18年度に発生したことによる。村の総務課によると「返礼品のお米は、寄付者の希望に応じて年度を越えて発送する。17年度に寄付額が1億5000万円と大幅に増え、18年度は(2000万円と)少なかったことも影響した」。寄付に対する「還元率」を17年度の50%から、総務省の指導に従って30%に下げたことも響いたようだ。

ふるさと納税が爆発的に伸びているのは、寄付者の自己負担が所得税・住民税の控除額の上限までは2000円ですみ、返礼品の分だけ丸々得をするからだ。しかも上限は年収に比例するのではなく累進的に伸びる。高所得者ほど節税メリットが大きいわけだ。独身または共働きの場合、年収500万円なら上限は6.1万円だが、1500万円になると38.9万円、5000万円なら208万円に跳ね上がる。年収3倍で節税メリットは6倍、年収10倍でメリットは34倍になる。高所得者ほど利用のインセンティブが働く仕組みなのに、総務省は所得階層ごとの利用実態を調査していない。

交付税の補填含めても373団体"赤字"

 

 

ふるさと納税の利用者が恩恵を受けることと裏腹に、居住地の自治体は住民税の控除という形で翌年度の税収が減る。18年度の受け入れ額から経費と19年度の控除額を差し引いて収支を計算したところ、45都道府県(96%)と559市区町村(32%)が"赤字"だった。都道府県では10億円超の赤字が19団体(41%)あり、市区町村では1億円超の赤字が210団体(12%)にのぼった。

 

 

地方交付税の交付団体の場合、税控除が膨らんでも交付税でその75%が補填される。実際に交付税に上乗せされるのは20年度なので、20年度の補填見込み額を先ほどの収支に加えてみた。すると、42都道府県(89%)と331市区町村(19%)では交付税を加味しても赤字になることがわかった。このなかには小さな団体も多く含まれ、目ぼしい返礼品の有無で格差が開いていることがわかる。

都道府県で赤字額が最大なのは東京都で347億円。大阪府の21億円、神奈川県の20億円がこれに続いた。市区町村では川崎市が54億円で最も大きい。交付税を加味しなければ横浜市の134億円が最大だが、横浜市交付税で102億円が補填される見込みのため、不交付団体の川崎市と明暗が分かれた。2位以下は世田谷区、港区など東京23区がズラリと並ぶ。高所得者が多い地域ほど赤字額が大きい。

川崎市、市民に窮状訴え

川崎市は「市税のしおり2019」と「令和元年度川崎市財政読本」という市民向けの冊子で、「ふるさと納税で困っています」と訴えている。今年度当初予算時点の流出見込額49億円をベースに、「保育園の運営経費なら園児3000人分」「ごみ収集・処理経費なら全世帯の約4割相当」と説明。6月7日には福田紀彦市長が鈴木淳司総務副大臣(当時)に要請書を手渡している。「行政サービスへの影響が深刻なため、(不交付団体にも)財政措置を講ずる」「高所得者ほど節税効果が生じるので、特例控除額に定額の上限を設ける」ことなどを求めた。

町村では不交付団体の静岡県長泉町の赤字額が9100万円で最大。同じく不交付の山梨県忍野村が6600万円で続く。2100万円で9位の京都府精華町は、交付税補填前の影響額は9400万円と最も大きい。返礼品を一切用意していないことが響いているが、町では「マンガを使った案内をホームページに載せるなど、『入り』を増やしたい」(税務課)としている。

国税庁国税への影響把握せず

地方交付税で補填する控除額は、各自治体の基準財政収入額から引かれる形で見積もられている。控除の発生を前提に毎年の地財折衝や地方財政対策がなされているため、交付税の配分に直接影響するわけではない。だが、この補填がなければ臨時財政対策債の起債を減らすなど、地方全体の財政健全化につながった可能性は高い。

加えて、確定申告をすると所得税からも控除されるので、所得税の33.1%を原資とする交付税の総額に影響している。国税庁は「寄付金控除については標本調査をしているが、ふるさと納税に絞った調査はしておらず、調査の予定もない」(企画課)という。ふるさと納税の規模は年々拡大しているのに、国税への影響額は把握していない。

確定申告をするかワンストップ特例を使うかどうかで、自治体への影響額が異なるという問題も存在する。ワンストップ特例とは、5自治体までの寄付なら確定申告が不要な制度で15年度から始まった。寄付者がワンストップ特例を使った場合、税の控除が個人住民税からのみとなり、自治体の負担が重くなる。自治体側はこれを問題視している。指定都市市長会は「所得税控除相当額は、確定申告が行われた場合と同様に、全額所得税から控除する仕組みとすべきである」と主張。特別区長会は「地方特例交付金等で国がその財源を補填すべき」としている。ただ、総務省側は指定制度をスタートさせたばかりということもあり、高所得者優遇の制度設計を含めて「当面はこれでやっていく」(市町村税課の恩田馨課長)としている。

(日経グローカル編集長 磯道 真氏)