瑚心すくいの地方創生が生き方を創っていく

高齢化社会と人口減少、地方創生の未来を考えます

白馬・熱海に復活の足音 活性化 自治体の努力次第

「ポスト・ニセコ」。冬季スポーツを楽しめる場所として、北海道のニセコ観光圏に続いて外国人が増え、こう呼ばれるのが長野県白馬村だ。

「ハクババレー」と称される白馬村と周辺市村のスキー場10カ所は、18~19年シーズンの外国人客が前年比11%増の延べ37万人となった。5年前の約3倍だ。国内スキー客の減少や民宿の後継者不足で苦しんでいた村の観光は息を吹き返した。

外国人客の増加を見込んだ観光投資も相次ぐ。森トラストと米マリオット・インターナショナルは18年12月、既存宿泊施設を改装して村内初の外資系ブランドホテル「コートヤード・バイ・マリオット白馬」をオープンした。住宅地の地価はまだ1.0%の上昇と小幅ながら、23年ぶりにプラス転換を果たした。

もっとも白馬のように訪日客の恩恵を受ける地域は一部にすぎない。旅行消費に占める訪日客の割合を見ると、1割を超えているのは12都道府県だけだ。偏在する訪日消費に頼らず、独自の観光対策を展開しているのが静岡県熱海市だ。

「ADさん、いらっしゃい!」「市の専任職員が誠意をもって対応!」。市のホームページにはテレビ番組や映画のロケを呼び込もうとするメッセージが所狭しと並んでいる。積極的な取り組みの裏には宿泊者数の減少への危機感があった。

市の宿泊客数は1960年代半ばには530万人だったのが、11年度には246万人と半分以下に激減した。ロケの無料サポートのほか、SNSを使った観光プロモーション、地元NPOなどによる商店街の活性化策などあの手この手でテコ入れを図り、近年は300万人超に回復してきた。

熱海駅周辺や海沿いの地区ではリゾート開発やホテル建設が相次いでおり、商業地の地価は2.9%上昇。静岡県内で1位となった。熱海の宿泊客に占める訪日客の比率はわずか1%。日本人旅行者の積極的な取り込みが功を奏した。

知名度や観光客が乏しくても、地価が上昇している自治体もある。住宅地の地価が20年連続で下落した鳥取県の中で、3年続けて3%以上の上昇率を示した日吉津村。県は「子育ての環境に恵まれていることが人口流入につながり、住宅地を中心に地価を押し上げた」と指摘する。

日吉津村は妊娠から子育てまで幅広い相談に乗ることで母子を支えるフィンランド生まれの「ネウボラ」と呼ぶ支援制度を取り入れた。保健師が出産した母親を訪ね、子育て支援施設の利用を促したり、親の状況に応じた支援プランを提供したりしている。小学校入学前に教材費などで1人当たり1万5千円を助成する村独自の制度もある。

15年の国勢調査では鳥取県全体の人口が10年前と比べて5%余り減ったが、日吉津村は12%近く増えた。同村の人口は3500人ほど。村内には王子製紙の工場があり、財政的に恵まれている面もあるが、小さな自治体でも住民のニーズをくみとる工夫で活性化できるという手本を示した。

まだらもようの基準地価の回復は、人を呼び込む自治体の努力を映し出している。

 

 小川和広氏、山本公啓氏、太田明広氏、小田浩靖氏、安芸悟氏、北川開氏がご担当。