瑚心すくいの地方創生が生き方を創っていく

高齢化社会と人口減少、地方創生の未来を考えます

地方創生交付金利用に地域差 過疎地は危機感強く

国の「地方創生推進交付金」を利用する市区町村の割合が、都道府県ごとに大きく異なっている。栃木県や鳥取県などは2019年度までの5年間に全市町村が交付金を利用したが、大都市圏などでは7割以下のところもある。衰退への危機感が強い地域で利用率が高い。

地方創生交付金

地方創生推進交付金は国が毎年1000億円の予算を先進事業やその普及に取り組む自治体に重点配分する。国の地方創生の第1期(15~19年度)の実績(要件が一律の移住支援金を除く)が、取材でこのほど分かった。交付金を利用した市区町村の割合が低いのは東京都や山梨、埼玉県といった首都圏や、三重、和歌山県など近畿圏で目立つ。

最も割合が低いのは沖縄県の22%。同県は「人口が増え続け、観光産業が雇用を下支えしている」と説明するが、地方創生に頼らなくても「沖縄振興特別交付金」を受ける自治体が多い事情もあるようだ。

山梨県は「東京の企業の工場が多く、財政的に切羽詰まっていないのではないか」(市町村課)と見る。だが、人口減少が深刻化しており「全市町村で危機感を共有し対策を講じる必要がある」(同課)状態だ。

利用率の低さには人手不足も関係している。佐賀県は「福祉や教育の施策などに忙殺され、新たな取り組みに挑戦するマンパワーが足りない」(さが創生推進課)と指摘。北海道は面積が広い上、市町村数も多く「事業の受け皿になる組織や人材が乏しい」(地域戦略課)という。

一方、交付金を利用した市町村の割合が高かった県は、それだけ衰退の危機感が強いとも言える。利用率100%だった栃木、富山、鳥取、徳島、熊本県などは、県内に山間部や離島に過疎地を抱える。鳥取徳島県は市町村向けに担当職員を配置し、交付金を活用した地方創生の計画作りなどを支援してきたという。

人口減が止まらず、市町村単独では有効策を取れない中、広がっているのが観光集客の広域連携だ。知名度の低い市町村でも広域の集客策に参加することで活性化が期待できるためだ。

栃木県は全市町村と交付金を申請し、17年から自転車レースの国際大会「ツール・ド・とちぎ」を毎年開催。今年3月には3日間で全国から約7万9000人が訪れ、10億円超の経済波及効果を生むイベントに成長した。レースコースに全市町村の観光スポットを入れ、周辺で地元産品も販売する。富山県も全市町村とDMO(観光地経営組織)を設け、富山湾立山連峰の眺望を生かし「海のあるスイス」の周遊を促す。

政府は自治体の地方創生を後押ししてきたが、東京一極集中に歯止めはかかっていない。18年の東京圏の日本人の転入超過は約13万6000人。政府は20年に東京圏と地方の転出入を均衡させる目標を断念した。自治体には19年度、これまでの課題を踏まえた第2期(20~24年度)の地方版総合戦略の策定を求める。

自治体が交付金を使わず、自発的に地域を振興するのに越したことはない。ただ、状況が深刻なのに動きが鈍い地域もある。内閣官房のまち・ひと・しごと創生本部は「お金を使う場合は効果を考えるが、交付金を利用しない自治体は成果指標(KPI)の見直しをしない例が多い」と活用を促す。自治体には支給期限が切れても事業を持続できる仕組みも課題になる。

(東京地方部 高畑公彦氏)