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日本アニメ、世界中に聖地

世界で脚光を浴びる日本のアニメ映画が、観光交流にも一役買っている。海外を舞台に取り入れたり、作品に登場した場面をほうふつとさせる場所やイラストなどがSNS(交流サイト)で共有されたりして、国内外のファンが現地を訪れる「聖地巡礼」の動きが熱を帯びている。

4月に公開され、シリーズ最高の興行収入91億円を突破した人気アニメ「名探偵コナン」劇場版「紺青の拳(フィスト)」。劇場版23作目となる今作では初の海外となるシンガポールを舞台に設定した。東南アジア各国や中東など広い地域で順次公開されている。

「ここはコナンがキッドとココナツウオーターを飲んでいた噴水。ここは京極さんと園子が待ち合わせた公園です」。現地のガイド、マイケルさんが場面を紹介しながら案内する。旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)が5~9月に企画したツアーには約3000人が参加した。

マーライオン像や、空に船が浮かぶような形状が印象的なホテル「マリーナベイ・サンズ」など、実際に作品中で登場した場所を回る。東京都から参加した20代女性は「キャラクターたちの行動を追体験できるのが楽しい」と満足げだ。ツアーは日本からの出発限定だが、コナンの認知度が高い台湾、ベトナム、タイなどからはツアーの開催を求める問い合わせも多くあったという。

SNSを通じた発信でファン同士の交流が広がっているのも特徴だ。シンガポールでは6月からの公開を記念し、コナンを描いた壁画がチャイナタウンに登場した。現地で活躍するアーティスト「Yip Yew Chong」さんの作品で、1年間限定での展示という。

イラストや「聖地巡礼」の様子はフェイスブックツイッター、インスタグラムで拡散された。海外でのプロモーションを手がけるトムス・エンタテインメントの鈴木幸介・海外ライセンス課長は「個人で現地を訪れて楽しむ人も多くいて、思わぬ効果に驚いている」と話す。9月にはファンの多い中国でも公開が始まり、さらに人気は広がりそうだ。

大ヒットしたジブリ映画「千と千尋の神隠し」は日本での作品公開から18年の時を経て6月に中国での上映が始まった。日本文化への関心の高まりや日中関係の改善に伴って中国政府からの上映許可が下りやすくなったとみられる。興行収入は4億8千万元(約72億円)に達し、上映期間の延長も決まった。

火付け役は中国版のポスターだ。中国のデザイナー、黄海氏がオリジナルで作成したもので、ふすま絵に描かれたキャラクターが主人公の千尋を見守る絵や、水の中の線路を歩く千尋のイラストなど目を引くデザインで、中国国内や日本でも話題になった。

作品に出てくる建物や町のモデルになったと噂される台湾の九份(きゅうふん)も再び注目を浴びている。公式には宮崎駿監督が否定しているものの、口コミで噂が広がり、観光客が訪れている。

8月に訪れた現地では、日本人のほか、中国人観光客を多く目にした。台湾総統選などを背景に中国は8月1日から台湾への個人旅行を禁止したが、1日より前に許可された個人旅行と、団体旅行は引き続き認めている。

「湯婆婆の屋敷に似ている」とされる茶屋「阿妹茶酒館」の周りには夜になると一斉に赤ちょうちんがともり、妖しげな雰囲気を醸し出す。スマートフォンを掲げる人たちでごった返し、小さな町には収まりきらないほどだ。作品を名目にしたツアー客も多い。

聖地巡礼」といえば、2016年に公開され、興行収入250億円を突破した新海誠監督作品「君の名は。」の大ヒットが記憶に新しい。舞台の「糸守町」は架空の町だが、岐阜県飛騨市がモデルとされる。自治体がタイアップして誘客に乗り出し、日本人だけでなく多くの外国人観光客が訪れた。

日本国内でもさらなるインバウンド増加をめざす動きがある。「コナン」の作者、青山剛昌氏や「ゲゲゲの鬼太郎」作者の故・水木しげる氏などの故郷である鳥取県は19年度、香港、台湾、韓国向けに関連施設を安く周遊できるパスを発行。台湾の人気ブロガーも招待し、インターネットでの発信に力を入れている。

公開中の新海監督の新作「天気の子」は10月からインドでの公開が決まった。「ボリウッド」という言葉が生まれる映画大国インドでの公開は、日本のオリジナルアニメ映画としては初の快挙だ。

インターネット上で4月、インド公開を求める署名活動が起こり、約5万人を超えるファンの署名が集まったのがきっかけだ。新海監督は「神話と映画の国インドで『天気の子』をどのように楽しんでいただけるのか、今からわくわくしています」とのコメントを発表した。

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18年の訪日外国人客数は初の3000万人台の3119万人となった一方、日本人の海外旅行者数も過去最高の1895万人(日本政府観光局)となった。作品を通じて国内外のファンがつながり、双方向のさらなる観光客拡大にもつながりそうだ。

(国際部 白岩ひおな氏)