瑚心すくいの地方創生が生き方を創っていく

高齢化社会と人口減少、地方創生の未来を考えます

若い女性流出 悩む地方 男女比崩れ人口減加速

地方自治体が若年層の女性の「流出」に悩んでいる。47都道府県のうち、15~29歳の人口が2018年に転出超過だったのは40あり、その8割の32道県で男性より女性の方が転出超過数が多かった。若年女性が男性より転入超過なのは東京など都市部の5都府県だけで、地方から一部の都市部に若年女性が流れている。少子高齢化と人口減が続く地方にとっては、若年女性をいかにつなぎ留めるかが課題だが、試行錯誤が続く。

総務省の統計「住民基本台帳人口移動報告」をみると、5歳刻みで世代別に人の移動傾向がわかる。各都道府県別に、入ってきた人が出て行った人よりも多ければ転入超過、出て行った人の方が多ければ転出超過という。

進学や就職時に転出

最新の18年の統計をみてみる。まず世代別の特徴だ。転出入が最も多いのは男女とも20~24歳で、全体の2割にのぼった。15~29歳に広げると、全体の4割超に達する。転出入で若年層が多いのは進学や就職に伴う引っ越しがあるためだといわれている。

次に15~29歳を若年層と位置づけ、47都道府県の若年人口の出入りを調べてみた。若年層が転出超過なのは40道府県にのぼり、そのうち男性より女性の転出超過数が多いのは32道県に達する。転入超過は7都府県。この中で5都府県では女性の転入超過数が男性より多く、2県では男性の転入超過数の方が女性より多かった。

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男性の転入超過数が多い2県は愛知と神奈川だ。愛知は男性の転入超過数が女性の2倍という全国的に珍しい「若年男性の集中県」だ。トヨタ自動車などの製造業が多く、働き手が集まるためだ。同県は「男女の人口のアンバランスは婚姻数や子どもの数に影響を与える」(政策企画局)と危機感を募らせる。

東京に集中

全国で最も若年女性を引き付けるのは東京だ。若年層の転入超過数は男性より女性の方が6165人多かった。大阪や福岡、千葉など都市部に若年女性が集中する。

東京への若年女性の転出比率が男性に比べて高いのは、秋田や山形など東日本中心に15県だった。大阪の場合は徳島や鳥取など西日本の19府県だった。女性は地元から近い都市部に流れる傾向がある。

女性の転出者のうち若年層が占める割合が高いところも調べた。トップは山形の58%で秋田が57%で続く。新潟(56%)や青森(54%)、福島(54%)などが上位に並んだ。最も低かったのは東京(39%)だった。最も女性を集める東京に近いところはやはり若年女性の流出率が高い。

結婚や出産の機会が多い若年女性が減れば、少子高齢化が加速する可能性が高い。「若年男性の流出より問題は深刻」と指摘する声は多く、自治体には頭が痛い問題だ。

働く機会求める

若年女性が都市部に集まる第一の理由は働く機会にあるとされる。高度経済成長期は地方の若い男性が集団就職などで都市部に流入し、労働力となった。いまは経済が成熟し、男女雇用機会均等法なども整備されて状況は変わった。女性の進学率が上がり、総合職や専門職などを希望する人も増えた。学歴が高いほうが一般的に大企業に多く就職する傾向もある。すると大企業が集中し、雇用環境が整備されている都市部に若い女性が流入していく。

若年女性の独立心の高さを示唆する調査もある。政府が15年に実施した「東京圏に転入した若年者の働き方に関する意識調査」だ。地元の就職先を選ばなかった理由を聞くと「親元や地元を離れたかったから」の回答は男性より女性の方が2倍近く多かった。政府のまち・ひと・しごと創生本部の資料も「若年女性が地元に息苦しさを感じている可能性がある」と指摘する。

見えない歯止め策

地方に対策はないのか。ニッセイ基礎研究所の天野馨南子准主任研究員は「就職や結婚、昇進などライフデザインが固まらない20歳代に照準を合わせるべきだ」と説く。「地方企業は男性前提の働き方、意識を改める必要がある。同じ能力なら女性を採用してはどうか」と提案する。

とはいっても簡単ではない。天野氏は「子育て支援で若年人口を増やした自治体の多くは大都市のベッドタウンだ。地方で対策の成功例を見つけるのは難しい」と話す。

愛知県は18年、若年女性が東京圏に流出する背景を探るため、県出身の18~39歳の女性に調査した。キャリアアップ志向が強い人や結婚・出産後も働きたい人が、就職のために流出する実態が鮮明だった。東京圏に住む女性の方が「希望する働き方が実現できる」と考えていることも分かった。

愛知県は県内の経営者に女性の登用や意識改革を促し、住みやすさをアピールする冊子を都内の大学などで配布する取り組みを始めたが、まだ効果は出ていない。担当者は「長い目で取り組み、流れを変えていきたい」と話す。

東京への若年女性の流入と定着の傾向が男性より強まっているのはここ5年ほどだ。新たな傾向にどの自治体も対応できていないのが実情だ。